成長期にある子供の口の中の環境は、大人に比べて変化が激しいうえ、歯の健康を保つことは、子供の将来にもかかわります。
虫歯がなく、歯並びもきれいな子なら、スポーツや体育の授業でも身体能力を十分に発揮できるでしょうし、勉強にも集中できます。
しかし、子供の歯を守るのはなかなか容易ではありません。
子供は歯磨きが苦手です。
最近は保育園や幼稚園、学校などでの取り組みや親への啓発もまあって、歯磨きを嫌がる子も減ってきましたが、歯の隅々まで上手に磨ける子はいません。
また、スポーツや事故で歯をぶつけて欠けてしまうということも起こります。
親が注意して、わが子の歯を守るという意識が大切です。
乳歯の治療
乳歯はいずれ永久歯に生え替わる歯です。
そのため、「本格的な歯のケアや治療は、永久歯になってから」と考える方も多いのですが、乳歯のときから歯を守ることは重要で、乳歯の状態は永久歯にも影響します。
また、乳歯といえども、虫歯になったり、歯並びが悪くなったりすれば、話すことや食べることを正しく覚えることができなくなります。
乳歯が丈夫で健康で丈夫だからこそ、美しく健康的な永久歯が生えてくるのです。
「どうせ、すぐに抜けてしまうのだから」と安易に考えるのではなく、幼い子の将来のためにも、乳歯の頃から歯を大切に守ってあげてください。
保隙装置(ほげきそうち)
虫歯やけがなどで乳歯を失い、そのまま放置していると、その隙間を埋めるために他の歯が移動してしまいます。
すると、永久歯が正しい場所から生えてこなくなり、歯並びの乱れにつながります。
そのようなことが起きないように、抜けた乳歯があった場所を埋めるために使われるのが、保隙(ほげき)装置です。
これによって、隣の歯が移動してくるのを防ぎ、永久歯が本来の場所から生えてくるよう導きます。
ラバーダム防湿
歯科の治療中、口をずっと開け続けなくてはならないのは、大人にとってもつらいもの。
ましては、子供にとっては耐えがたい苦痛でしかありません。
口を開け続けなくてはならないのは、治療する歯に唾液などが入らないようにするためなのですが、ラバーダムというシートで治療する歯の周りを覆ってしまえば、唾液は入りませんし、歯を舌でなめてしまうということも起きません。
ラバーダムの装着には手間がかかるので、使わない歯科クリニックが多いのですが、小児歯科でラバーダムは欠かせません。
小児矯正
床矯正
床矯正とは、歯並びを矯正する際、歯に直接働きかけるだけでなく、顎の骨そのものに力を加え、顎の大きさを広げたうえで、歯並びを整える方法です。
歯列矯正で、顎が小さくすべての歯を並べるスペースが足りない場合、歯を抜いて歯の本数を減らすこともあるのですが、顎の大きさを広げることができれば、健康な歯を抜くこともなくなります。
特に、これから骨格の成長が期待できるお子様には有効な方法です。もちろん、骨格的に問題のない成人の方でも、可能な場合があります。
また、歯並びが乱れた原因を考え、歯並びの乱れにつながる悪い習慣や癖を改善していくことも治療と平行して行っていきます。
子供の予防歯科
子供の予防歯科では、顕微鏡で歯の状態を確認しながら、子供の成長にあわせた歯の磨き方を丁寧に指導できるよう心がけています。
歯の磨き方といっても、歯ブラシの選び方やフロス、ワンポイントブラシ、フッ素の使い方などポイントはいくつもあります。
また、歯磨きの指導だけではなく、虫歯や歯周病になりにくい食事や飲み物の種類、摂取の仕方も重要です。そうした知識も、合わせてお子さんや親御さんにお伝えしています。
食生活で言えば、決して「甘いものは一切口にしてはいけない」というわけではありません。
どうやって甘いものを与えれば、虫歯になりにくいのかを親御さんと一緒に考えていきたいと思います。
子供の予防歯科の治療方法
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シーラント
保険診療の範囲内で可能な虫歯予防です。 虫歯のできやすい奥歯の溝をクリーニングしてきれいにし、フッ素を配合した歯科用プラスチックを塗ってUVライトで固めます。そうすることで、虫歯菌の増殖を抑えることができます。
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フッ素塗布による虫歯予防
乳歯や生えて間もない歯は、まだエナメル質が弱いため、フッ素を使って歯を守ります。
フッ素には、虫歯菌の増殖を防ぎ、歯を修復し歯質を強化する働きがあります。
フッ素入りのジェルや歯磨き粉でケアをしたり、歯科でフッ素を塗布してもらったりすることで、虫歯の予防を図ります。 -
バリアコート
生えたての歯にはバリアコートというフッ素を配合したコーティング剤を塗ります。 歯が完全に生えたらシーラントが行なえますので、バリアコートはシーラントが可能になるまでの一時的な予防法です。
子供の定期検診
虫歯の予防には定期的な検診が大切です。
どんなに丁寧に歯磨きをしても、いつの間にか歯の隙間などに汚れがたまり、不衛生になっていきます。
特に子供の場合は、口の中の環境の変化は早く、まだ弱い乳歯や生えたての永久歯は虫歯が一気に進行することもあります。
永久歯が生えそろうまでは、できれば3カ月ごとに定期検診をしたいものです。
検診を受けていれば、小さい虫歯もすぐに見つけられ、カンタンに治すことができます。
また、永久歯に生え変わる頃はトラブルが起きやすい時期です。早めに適切な処置を受けられるよう心がけましょう。
歯医者の食育
歯科医師は虫歯を治療することだけが仕事ではありません。
「歯の役割を理解し、噛むことの大切を知ることで健康な生活を送っていただきたい」という観点から食育にも取り組んでいます。
子供の場合、歯の生え方には個人差があるため、食育も歯の成長に合わせないと進めていく必要があります。
この時期に正しい食育を行うことは、将来の食生活によい影響を及ぼします。
育児書を読むだけでは、歯の成長と食育の関係はよくわかりません。
当院ではお子さんの成長過程に合わせ、一人一人の歯の状態に沿った食育指導を行っています。
口腔機能発達不全症
次のようなお子さんの症状が気になる方はいらっしゃらないでしょうか。
- 口がずっと開いている
- 舌足らず
- 食べるのがとても遅い
この場合、口腔機能発達不全症の疑いもありますので、歯科医師に相談してみましょう。
口腔機能発達不全症は2018年に新たに国によって病気と認められ、治療の対象となりました。
口の周りの筋肉の機能が十分に発達していないため、食べ物を上手に噛めず食べるのが遅くなったり飲み込んでしまったりする、うまく話せない、鼻で呼吸ができないのでいつも口を開けているといった症状が見られます。
早めに治療を始め、舌の使い方や噛む力のトレーニングなどを行うことで、改善が期待できます。
放置しておくと、症状が固定してし、大人になってからでは治せなくなります。
気になる方はぜひ、早めにご相談ください。
子供の歯のために親も学ぶ
いくら正しい歯磨きの仕方や食生活を教えても、子供が一度聞いただけで覚えることは、ほぼありません。
子供がしっかりと正しい知識や習慣を身につけるには、なにより親の指導が欠かせません。
親御さんも歯のケアや食生活について学びましょう。